誰でも一度は見たことがある、家が無い猫「ノラ猫」
その中で、耳の先がV字型や横向きにカットされている猫を見かけたことはありませんか?猫同士の喧嘩で耳が切れて傷になったのかな?と思われている方も多いようですが、実は「避妊去勢をした印」なのです。今回は、その耳カットについて説明いたします。
どんどん増え続ける子猫・・・
猫は、生後半年~8ヶ月くらいになると出産が出来ると言われています。子猫の時期はほんの短い間で、すぐに繁殖可能な大人の猫になってしまうのです。
1回の出産で産まれる仔猫の数は、なんと約5~7匹。さらに年に2回以上出産可能です。
その産まれた子達も時期が来れば出産・・・と、とんでもない猫の数にふくれあがります。最初一匹だった猫がねずみ算式に増え続けて・・・・・
3年後には2000頭以上になると言われています。
猫だらけになっていないのは何故?
これだけの数が増えていたら、世の中に猫だらけになってしまい、人間より多くなってしまいます。それでもほとんど見かけないのはなぜでしょう・・・・
ほとんどの猫たちが、私たちの知らない場所で亡くなったり、殺処分されているからです。飼い猫で健康な状態であれば20年は生きる猫ですが、野良猫の場合は長い場合で5年、多くの猫はそれ以下の年月で亡くなります。人間でいうと80歳生きるところ、子供や成人を迎える前に亡くなるわけですから、外での暮らしがどれほど過酷なものかが分かります。
▼痩せた体で子猫たちにミルクを与える親猫
目立たない場所で隠れていた猫です。人間を警戒し、大切な子猫たちを守っています。居場所が無いので、餌を探しつつ移動して暮らすしかありません。
自分の敷地で産まれた子猫を、ゴミとして捨てたり、遠くに放棄したりする人も多くいます。
▼もし自分が、家族と離されて知らない場所に置き去りにされたらどうしますか?
耳カットが行われるTNR活動とは?
不幸な猫を増やさないためにしている活動をTNR(ティーエヌアール)と呼びます。
捕獲(Trap)
不妊手術(Neuter)
元の場所に返す(Return)
の略になっています。
簡単に説明すると・・・ノラ猫を捕獲し、病院に連れて行き、避妊(メス)去勢(オス)の手術を施すというもの。手術をしたあとは麻酔がとけて正常だと判断したあと、元いた場所に離します。
この手術の最中に麻酔がきいた状態で、耳の一部をカットすることを「耳カット」といいます。耳をカットした後は出血しますが、傷口を止血と消毒で処置します。しばらくはカサブタになりますが数週間すると普通の耳に戻ります。耳を切られたことは猫たちは気づいていません。耳をカットすることにより、再び外に戻された猫が、不妊手術を施された猫かどうか、誰でもひと目で分かるようになります。この子が繁殖行動を起こすことがない事を、見た目で知らせることが出来るのです。
ちなみに、このTNR活動は日本だけでなく、世界共通のことなんです!
不妊手術のメリット
★新たに不幸な猫が産まれない
★性的なストレスが無くなり穏やかになる
★オスのマーキング行為が減る
★さかりの時期に鳴かなくなる
★体力の消耗が少なくなる
★多くの病気を防ぐことが出来る
生殖行為を求めての、猫同士の争いが無くなるので、ケガや病気のリスクが少なくなります。
*個体差はあります
不妊手術のデメリット
▲食欲が増え、肥満になりがちです。
ホルモンのバランスが崩れることにより起こるようです。
上記を見て分かる通り、メリットの方が断然多いです。手術にかかるたった1日~数日のことで、多くの幸せが得られます。
手術をするなんてかわいそう?
「動物の繁殖機能を奪うなんてかわいそう!!」という方もいますが、猫は人間が暮らす場所で生きている動物です。人間中心の社会の中で殺処分されたり、虐待にあったり、不幸な生き方を送らなければならない方が、比較にならないくらい辛い事です。外の猫に起きることを、自分に置き換えて考えてみましょう。
すでに生きている猫の命を守りながら、新たに不幸な命を作らないことが一番大切です。
私たちもいずれ死んでいくので、無限に増え続けていく猫を、ずっと飼っていける方なんていませんよね・・・。
TNR活動は反対!という言う人は「自然に反する」と言いますが、猫が増えることによる、殺処分や人間による放棄・虐待の方がよほど自然ではありません。
猫の耳カットはかわいそう?
手術中の麻酔が効いているいる時に切られるので、痛みはありません。猫自身も自分の耳を見るわけではないのでカットされていることは分かりません。
手術後にもしも耳カットしなかったら?
手術は人間と同じく、猫にとっても体力を使うことです。再び捕獲をし、麻酔を投与したり、メスを入れるのもとても危険です。メスの場合はお腹を開けるまで、子宮が無くなっているかどうか分かりません。ひと目で「すでに手術済みの猫だよ」と伝えることはとても大切です。
手術したあとの猫はどうなるの?
もうその子から、新たな猫が増えることはありません。その子の残りの猫生は「地域猫」として、地域の人たちで見守っていこうという活動がされています。決めた場所でご飯をあげたり、糞の後始末をしたりと、地域住民で話し合い管理します。
まだまだ問題も多くありますが、猫が好きな人も嫌いな人も協力し合い、命を粗末にしないことが大切です。
【地域猫の主な管理方法】
★餌と水を与える
★糞尿など、衛生上の管理をする
★駆虫などの投薬
★異常のある猫は獣医さんに見てもらう
給餌は毎日のことですし、費用負担は誰がするのか?などの問題があります。
誰がするの?
耳カットの活動は、ボランティアの皆さんにより各地で行われています。猫一匹の手術にかかる費用は、寄生虫駆除、ワクチンなども打つと数万円かかります。
捕獲するだけでも、何日もかかったりと大変な作業なので、なかなか数はこなせないですよね・・・。お金や時間や精神的にも辛い作業ですが、一匹でも多くの命を救うためにボランティアの方々が頑張っています。もし「近所の猫も頼みたいわ!」と思った場合はボランティアさんに丸投げではなく、自らも参加し、費用の負担をしましょう。町内会で話し合うのも大切です。
さらに「どうぶつ基金」などの団体でも、各地のTNR活動を行っています。こちらも費用や人員が必要となりますので、援助を募っています。ひとりひとり、出来ることから始めましょう。
耳カットしている野良猫は飼ってもいいの?
「誰かが世話をしているような、耳カットの野良猫・・・飼いたいけれど飼ってもいいの?」
こんなことを思われている方が多いそうです。外にいる耳カットの猫は、飼い主がいません。もし家で飼って頂けるとしたら、猫にとってもこれほど幸せなことはありません。人間と同じように落ち着ける家があるのは、猫にとってもうれしいものです。
慣れるまでは時間がかかります。外にいた時はおとなしかったのに、家にいれたら騒いでる・・・ということは当たり前です。環境が大きく変わって戸惑っているだけなので、数週間、数か月と時間をかけて慣らしてあげてください。
外で暮らす猫を減らすのが「保護猫活動」です。もし面倒みている方を見つけたら、一言お知らせしてあげるのもいいかもしれません。