シンガポールの猫探しの旅は、まず市内の街からはじめました。
日が昇りはじめ、暑くなりはじめた朝9時すぎ。私は猫を探しにチャイナタウンへ。猫に出会う確率が高いので、海外に行くと必ずチャイナタウンへ行くようにしています。
街は店を開ける準備をしていて、人の数はまばらでした。メインの通りから少し路地に目を向けると、1匹の太った三毛猫が毛づくろいをしています。青い首輪に黄色い鈴をつけていてとても可愛い子です。
近づいてみると、じっとこちらを見てからチャイナタウンの道を渡るように歩き出しました。案内されているような気がしたので着いていくと、まるで自分の縄張りを紹介するかのように、色々なお店の前で寝転んでみせてくれました。
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雑貨屋、飲食店とまわり、最後にカメラ屋さんの路地に入る三毛猫さん。
すると、黒い仔猫がニャー!と大きな声で叫びながら近づいてきました。まだ小さいので、ニャー!という発音よりかはシャー!という鳴き声に近く、写真を撮ろうとするとレンズに激突してしまうほどの元気な黒猫です。
しばらくすると壁にかけてある板の隙間で何か動いた気がしました。のぞいてみるとそこには黒白の八割れの仔猫が・・・。元気な黒猫とは対照的で、隙間からチラチラとのぞいては隠れていて表にはなかなか出てきてくれません。仲良くなろうと30分ほど黒猫と遊んでいたら、少しづつ黒白猫も距離を縮めてきてくれるようになりました。
11時近くなると中国人らしい女性が1枚のビニール袋を持って路地に入ってきました。ビニール袋を広げて地面に敷くと、その上に山盛りの猫缶を広げました。2匹の猫たちは、待ってましたとばかりに近づき、一気にバクバク。
ここに案内してくれた大きな三毛猫は、仔猫たちが食べている様子を見ているだけでしたが、女性は三毛猫をひょいと片手で持ち上げ、カメラ屋に置いたキャットボウルの前にポンと三毛猫を置きました。どうやら三毛猫はカメラ屋の猫のようです。女性は、仔猫と三毛猫にご飯を与えるという作業を無表情で素早くこなし、どこかへ行ってしまいました。
カメラ屋では開店準備をしているお兄さんがいて、猫と私の様子を度々見にきました。話しかけてみると、「この仔猫たちは、最近この路地に住み着いたので、面倒を見ているんです。」と答えてくれました。三毛猫は仔猫たちの親ではないそうです。三毛猫はお兄さんのそばで幸せそうにごろんごろんと転がって甘えています。名前はマオ(中国語で「猫」)と呼んでいるそうです。マオは、自分のお店を自慢するかのように、ショーケースの周りをぐるりと回り、たくさんの一眼レフの前で毛づくろいをはじめました。とても存在感のある三毛猫です。「マオは街の人気者で、散歩が終わると、いつも店の前で寝ているよ。」と話してくれました。言葉少なめで照れながら話してくれた、優しい表情のお兄さん。そのお兄さんになでられて、マオはとても嬉しそうでした。
日本に帰国する前日、仔猫たちが気になり、もう一度この場所に寄ってみました。カメラ屋の裏に住んでいる小学生の女の子が、三毛猫や仔猫たちと仲良く遊んでいます。「学校から帰ると、マオや仔猫たちと遊ぶのが楽しみ!」と話してくれた女の子。
彼女のお兄ちゃんから「夕食だよ」と呼ばれて家に帰るまで、猫たちを愛おしそうになでていました。黒猫が人懐こいのは、この子が可愛がっているからなんでしょうね。優しい人たちに見守られて、どんな風に育っているのか、またシンガポールに行った際は、訪れてみたいと思います。