初めて熊本県の湯島を訪れたのは初夏の5月。
熊本市内から電車と車を乗り継ぎ1時間半、上天草市の江樋戸港(えびとこう)から、フェリーに乗ると湯島に行くことが出来ます。
この日はとても良い天候で、イルカが見られるという海はとても青く美しく輝いていました。
フェリーには、島民の日用品が積まれ、おじさんが5人程乗っていました。天草地方の方言で話す、めずらしい会話に耳を傾けていましたが、全く聞き取ることが出来ません・・・。
島に到着すると、島民がフェリーから運ばれてきた荷物を下ろします。無言で行われるその作業は毎日の光景のようです。
港に着いて最初に目に入ったのは、猫の像。「湯島猫神像」と書い てある、招き猫です。
その周りにいたのが、三毛猫と茶トラ猫。のんびりと歩いたり、寝そべったり。茶トラは、なぜかずっと「ニャーニャー」と鳴いています。そんな猫たちを気にする風もなく、まわりでは売店のおばさんや、大工作業をするおじさんが黙々と作業をしていました。茶トラがあまりにも泣き続けるので、通りがかりのおばさんが、「どうした・・・?」と尋ねますが、相変わらず、ずっと「ニャーニャーニャーニャー」と何かを訴えていました。何を言っているかわかりませんでしたが、そばに近づいても全く逃げず、とても人なつこい猫さんでした。
湯島は1時間ほどで歩けてしまう小さな島で、漁港や民家がある地区の反対側では、イルカウォッチングができるそうです。島の中心は山になっていて、急斜面の山道が続く。初夏の山道は、少し歩くだけで汗ばむほど。道ですれ違う人たちは、皆、明るく「こんにちは!」と声をかけてきてくれ、猫に会いに来たことを伝えると、とても喜んでくれました。
ここ数年、新聞で「猫の島」として紹介されてから、猫を見に訪れる方が多くなり、フェリー乗り場にも猫の像を設置したそうです。
途中、小さな集会所のようなものがあり、その周りには10匹ほどの猫たちがくつろいでいました。
隣の民家のおじさんが、猫たちにご飯をあげているのだそう。どの子も人懐こく、その場に座っていると、膝の上にまで乗ってきます。白い部分が多い、茶白猫や三毛猫がたくさんいました。
この時期は仔猫を産んだばかりの三毛猫がいました。お母さん猫が、人間に分からない場所に隠して育てているそうです。
島はゆっくりとお散歩して、離島の生活や、美しい海をみるのがおすすめです。季節が良ければ美しい花がたくさん咲いています。
撮影中に何度か出会った、優しそうなおばさまが、
「ここには、猫をいじめたりする人がいないからね。だからはのんびり暮らしていけるのよ。」
と話してくださいました。
人間と猫がお互いを尊重しながら共存できる場所。この穏やかな雰囲気は、今の日本では、とても貴重な場所のようです。
皆さまも、湯島を訪れた際は、島の雰囲気に癒やされてみてくださいね。